2009年4月9日木曜日

編訳書の出版

同僚の結城先生と私が編訳者となり、講座の大学院生数名とともに、Nisbett & Cohen "Culture of Honor"の翻訳を進めてきました。そしてこのたび、北大路書房から「名誉と暴力ーアメリカ南部の文化と心理」として出版されることになりました。本書のメッセージは、端的に言えば、アメリカ南部において暴力性が特徴的な理由は、気温や貧困、奴隷制度によるものではなく、「名誉の文化」にあるというものです。アメリカ開拓当初、南部にはそもそも牧畜を生業とした人々が入植し、しかもその自然環境は牧畜を行うのに適していたものの、人々は家畜を始めとする財を防衛するにはどうしたらいいかという問題に直面しました。政府権力が弱いため、頼りになるのは自分だけです。そのような環境のもとで自衛していくには、自分の弱さを露呈するのは致命的であり、むしろ侮辱されたらそれに対してやり返して自分の強さを示さなければなりません。そしてそういった暴力性がその環境において有効な行動となれば、同様の行動をとる人々の数は多くなり、侮辱されてもそれには応じないという行動をとるメリットはなくなってしまいます。興味深いのは、当然現在の南部の経済形態は牧畜ではないものの、しかし同様の行動形態が維持されている点です。つまり「やられたらやりかえせ」という行動原理を支えていた経済形態が消えてもなお、それが維持されているというのは、その行動原理が「この場面で人はこう行動するだろう」という期待になっており、それが法制度や家庭のしつけ等の公的な表象や日常のpracticeに反映されているからだと言えるかと思います。

・・・と長々書きましたが、もしよかったらぜひ購入してみて下さい!

0 件のコメント: