2009年4月20日月曜日

実験社会科学入門

今期は非常勤がなく、担当授業は、社会科学実験研究センター提供の大学院共通科目「実験社会科学入門」のみ。昨年と同様に、早稲田の清水先生、河野先生が書かれた「入門政治経済学方法論」を最初に使用し、その後は私が選んだ社会科学諸分野の実験研究の論文をターゲットにしていろいろと議論していく内容です。社会心理の院生だけでなく経済や人類学の院生も来るので結構おもしろい議論になります。今年は議論するにはちょうどいい人数なんですが、ただそれ故にちょっと1人あたりの負担が大きくなってしまうかも。

2009年4月9日木曜日

大学院生募集

私が兼坦している北海道大学大学院文学研究科行動システム科学講座では、大学院生を募集中です。どうしても北海道というとその地理的要因により敷居が高いかもしれませんが、しかし研究に打ち込むには最高の環境であると言えると思います。手前みそになりますが、文化心理学に関して、今となっては日本においてここよりも充実したスタッフがいるところはそうないはずです。詳しくは、講座の大学院生募集のページをご覧下さい。

編訳書の出版

同僚の結城先生と私が編訳者となり、講座の大学院生数名とともに、Nisbett & Cohen "Culture of Honor"の翻訳を進めてきました。そしてこのたび、北大路書房から「名誉と暴力ーアメリカ南部の文化と心理」として出版されることになりました。本書のメッセージは、端的に言えば、アメリカ南部において暴力性が特徴的な理由は、気温や貧困、奴隷制度によるものではなく、「名誉の文化」にあるというものです。アメリカ開拓当初、南部にはそもそも牧畜を生業とした人々が入植し、しかもその自然環境は牧畜を行うのに適していたものの、人々は家畜を始めとする財を防衛するにはどうしたらいいかという問題に直面しました。政府権力が弱いため、頼りになるのは自分だけです。そのような環境のもとで自衛していくには、自分の弱さを露呈するのは致命的であり、むしろ侮辱されたらそれに対してやり返して自分の強さを示さなければなりません。そしてそういった暴力性がその環境において有効な行動となれば、同様の行動をとる人々の数は多くなり、侮辱されてもそれには応じないという行動をとるメリットはなくなってしまいます。興味深いのは、当然現在の南部の経済形態は牧畜ではないものの、しかし同様の行動形態が維持されている点です。つまり「やられたらやりかえせ」という行動原理を支えていた経済形態が消えてもなお、それが維持されているというのは、その行動原理が「この場面で人はこう行動するだろう」という期待になっており、それが法制度や家庭のしつけ等の公的な表象や日常のpracticeに反映されているからだと言えるかと思います。

・・・と長々書きましたが、もしよかったらぜひ購入してみて下さい!

2009年4月8日水曜日

give, give, give, give, give...

asahi.comの記事より(Giveの5乗で行こう)
勝間さんの破竹の勢い?も手伝ってか、説得力があります。かねてから、ゲーム論を知ることで人間行動の洞察は深まるものの、しかしそれに対して「無自覚に」行動しないと、相手からの返報の有無(とそれに対する期待)やそれに応じた自分の行動戦略の変更を気にするあまり、逆にそれが自分の行動をしばりつけると思っていました。個人的には、この手のアドバイスはその「無自覚さ」を引き戻してくれるもののように思えます。もっともここには明示されていませんが、見返りを周囲に期待しないことというのもセットで重要なのでしょう(しかしこれが難しい)。

・・・というわけで、まずは査読を片付けないと(苦笑)。